僕は、日頃から、車のガソリンが少なくなっても、なかなか入れない癖がある。スタンドごとに「ガソリン1リッター90円」とか「91円」など微妙に異なる値段をつけているので、ゲーム感覚でついつい「1円でも安いところ…」と探してしまうのだ。
車の方も、給油ランプがつき始めてから、まだまだ30kmぐらいは走ることができるので、安心して探すことができる。当然、完全に止まるまで走ったことはない。
2002年9月30日、その日も、ついついそんな感覚で入れないでいたのだが、しばらくすると、ちょっと様子が変わってきた。アクセルを踏んでもスピードが出ない。
「もしかしてやばいのでは」
と思うが、夜中の1時、新青梅街道、となれば、営業中のガススタンドは簡単には見つからない。結局、ガタガタいって、止まってしまった。
「うーむ、まずい」
エンジンをかけ直してみたら何とかかかったので、今度はゆっくり、一滴のガソリンも無駄にするまいという感じで、ハザードを出しながら進んでみた。しかし、相変わらずスタンドは見つからない。
「もうダメかもしれない」
しばらくして、また止まり、今度は、もうエンジンもかからなくなってしまった。
さて、どうしようか? 携帯があるからJAF(ジャフ)を呼ぼうか? それもくやしい。呼ぶだけでお金はかかるし、会員でないので、さらに高くなってしまう。
「たかが、ガス欠」ごときのために人を呼ぶなんて…。いつも、1円でも安く入れようと頑張っているのだ。
「仕方ない。ガソリンスタンドまで歩くか? ガソリンをわけてくれるに違いない」
車を降りて「おそらく」ガソリンスタンドのある方向に歩き始めた。
普段、車で2-3分で通過してしまう道なのに、いくら歩いても進まない。10分ぐらい歩いて、自分の車が遠くに小さく見えるところまで来たが、ガソリンスタンドがありそうな気配はない。
「これでは、朝になってしまう」
そうこうしている内に、雨がパラパラと降りはじめ、状況はさらに深刻に…
「やっぱり、歩くのはあきらめよう。でも、JAFはいやだ」
「そうだ! タクシーでスタンドまで連れてってもらおう、多少お金はかかるが、JAFよりマシかもしれない」
早速、タクシーを拾って、運転手さんに
「近くのガソリンスタンドまで、お願いします」と。
どれぐらい走っただろうか。どこまで行くか分からないので長く感じたが、実際はたいした事はなかったかもしれない。ようやくスタンドが見つかった。タクシーのメーターで1700円ぐらい。
スタンドのお兄さんに事情を話し、専用の容器にガソリンを5リットル入れてもらい、待たせておいたタクシーに乗って自分の車に戻った。運転手さんいわく
「えらく高いガソリンになってしまいましたね」。
ホントその通り。タクシー代と合わせて、4000円でたったの5リットル。普段の約10倍。車に戻ってから、ガソリンを入れる作業はいたって簡単で、その後は、すんなりと家に帰ることができた。
ガソリンは、なぜ、ああいう値段のつけ方をしているのだろうか。つまり、リッター90円とか91円とか、1円単位なのだ。新聞などでは、スタンドは、1円下がると赤字になってしまうとか、激戦区では赤字の値段設定をしている、とある。
でも、消費者の側は、実は1円の違いは20リットル入れても、20円の違いにしかならない。うちの車の場合、空の状態で満タンにしても、40リットル程度しか入らないので、1回の給油で最大40円しか変わらない。しかも、安いスタンドに行くために往復4kmぐらい走ると、その時点で、(リッター10km程度の燃費なので)ガス代が40円、さらに、往復の手間もかかる。
ただ、そう分かっていても、90円とか88円とか表示してあると、消費者心理として、ちょっとでも安い方を選ぼうとする。その(下手な?)売り方によって、スタンドが赤字になり、次々つぶれていくのではないだろうか。
今回のガス欠でかかったタクシー代を、今後のガソリン代からペイするためには、(1ヶ月1000kmぐらい走るので)常に、いつもより、リッター1円安いところで入れて、3年かかる。それまで、この車に乗っているかどうか…
数字のマジックというか、こだわらなくてもいいことにこだわると、結構損することも多い。(の)